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インプラント周囲炎とは?症状・原因・予防・治療法について

インプラント周囲炎とは?症状・原因・予防・治療法について

インプラント治療は、咬合機能、咀嚼機能、審美機能を高いレベルで回復させるだけでなく、寿命の点でもたいへん優れた治療法です。
このように、インプラントには優れた特徴があるのですが、寿命を低下させる病気があります。
それが、インプラント周囲炎という病気です。
このインプラント周囲炎とはどういったもので、予防や治療法はあるのでしょうか?

この記事では、インプラント周囲炎について解説します。
この記事を読むことで、インプラント周囲炎の症状、原因や治療法、予防法まで理解でき、次のような疑問や悩みが解決します。

この記事でわかる事

  • インプラント周囲炎とは何か
  • インプラント周囲炎はどうして起こるのか
  • インプラント周囲炎になるとどのような症状が現れるのか
  • インプラント周囲炎の治療法はあるのか
  • インプラント周囲炎を防ぐにはどうすればいいのか

インプラント周囲炎について

インプラント周囲炎は、インプラント治療後に最も注意したい疾患です。

インプラント周囲炎とは

インプラント周囲炎とは、歯肉や歯槽骨などのインプラントの周囲組織に生じる炎症性疾患の総称です。現在、インプラントが脱落してしまう原因のトップにあるのが、このインプラント周囲炎です。

インプラント周囲炎と歯周病の違い

インプラント周囲組織に炎症が起こったものをインプラント周囲炎といいますが、天然歯の周囲組織に炎症性疾患が生じたものは歯周病とよばれます。
インプラント周囲炎の細菌叢と歯周病のそれは異なります。このため、歯周病と同様の治療をインプラント周囲炎に対して行っても、歯周病ほどの効果は得られません。また、天然歯にはある歯根膜がインプラントにはないので、歯周病より炎症がインプラント周囲に進行しやすいです。

インプラント周囲炎の原因

インプラント周囲炎の直接的な原因は明確に特定されていませんが、細菌学的要因など、さまざまな誘発要因が挙げられています。

歯周病

前述した通り、インプラント周囲炎の細菌叢と歯周病のそれは異なりますが、歯周病はインプラント周囲炎の最近の供給源となり得ます。

プラークコントロール不良

インプラント周囲炎の発症には、口腔内細菌の関与も指摘されています。
インプラント周囲炎の原因菌は、インプラント周囲に付着しているプラークの中にいると考えられています。こうした原因菌は、細菌数が少なければ為害性をもたらしませんが、細菌数が増えればそうではありません。
プラークコンロールが不良な状態であれば、インプラント周囲炎の原因菌の量も多いと考えられ、インプラント周囲炎を起こしやすくなります。

ブラキシズム

クレンチング(歯を強く噛みしめる)やグラインディング(上下の歯をこすり合わせる)、タッピング(上下の歯をカチカチ合わせる)などのブラキシズムは、歯槽骨などの歯の周囲組織に大きな負担をかけます。
インプラントは歯根膜がないので、天然歯以上にインプラント周囲の歯槽骨に過度な負担をかけてしまいます。このため、インプラント周囲の歯槽骨の吸収が起こりやすくなり、インプラント周囲炎のリスクを高めます。

全身疾患

一例を挙げると、糖尿病です。
糖尿病は、免疫力を低下させたり、創傷治癒を阻害したりすることが明らかになっています。
糖尿病はインプラントに対しても悪影響を及ぼし、免疫力の低下や創傷治癒不全によりインプラントの周囲炎の発症リスクを高めます。

喫煙習慣

タバコの煙には、一酸化炭素やニコチンなどの有害物質が多く含まれています。これは、口腔内の血管系に作用し、血管を収縮させ血流を障害します。
血液の中には、インプラント周囲炎を起こす原因菌に対する免疫系の細胞に加え、損傷した歯肉などの歯周組織を修復する細胞も含まれています。
喫煙者の方は血管収縮作用により、これらの細胞がインプラント周囲組織に届きにくくなるため、インプラント周囲炎のリスクを高めてしまいます。

インプラント周囲炎の症状

インプラント周囲炎は、症状の差から、インプラント周囲粘膜炎とインプラント周囲炎に分けられます。

インプラント周囲粘膜炎

インプラント周囲粘膜炎は、インプラント周囲炎の初期症状です。歯周病でいえば歯肉炎に相当する段階で、インプラント周囲粘膜の炎症性変化を中心とした症状にとどまっています。
したがって、レントゲン写真を撮影してもインプラント周囲の歯槽骨に吸収性の変化がほとんど生じていません。

インプラント周囲炎

インプラント周囲炎は、インプラント周囲の歯槽骨に明らかな吸収性変化が起こった状態です。歯周病の歯周炎に相当します。進行の程度により、歯槽骨の破壊程度に差があります。
インプラント周囲炎が生じ、ある程度インプラント周囲の歯槽骨の吸収が進むと、歯槽骨の回復はたいへん困難です。インプラント周囲粘膜炎のうちに回復させるかが、インプラントの寿命に大きく関係しています。

インプラント周囲炎の治療法

インプラント周囲炎の治療法は、次に挙げるものから臨床症状に合わせて選ばれます。

歯石除去や機械的歯面清掃

インプラント専用のスケーラーや機械的歯面清掃用器械を用いて、インプラントの周囲に蓄積したプラークを物理的に除去します。

殺菌剤による洗浄療法

洗浄剤をインプラント周囲のポケット内部に注入し、内部の汚染物質を洗浄したり、消毒効果のある薬剤で洗口して、口腔内の細菌を洗い流します。
消毒薬としては、クロルヘキシジンが効果的です。

局所的もしくは全身的抗菌療法

インプラント周囲炎の急性期症状を認める場合には、抗菌薬、すなわち抗生物質を一定期間処方します。また、抗菌薬を直接インプラント周囲のポケットに注入することも行われます。
抗菌薬は、アモキシシリン(サワシリン®︎)が第一選択です。

光線滅菌療法

Er-YAGレーザーなどをインプラント周囲のポケットに照射し、無菌化を図ります。
レーザー照射を受けると、数ナノ秒という非常にわずかな時間に、活性酸素が発生します。この活性酸素により、細菌を物理的に破壊するだけでなく、免疫力を誘導することで予防的な殺菌効果も獲得します。

外科的療法

インプラント周囲炎への外科療法は、炎症性肉芽組織を物理的に除去するために行われます。局所麻酔のもと、歯肉を切開し粘膜骨膜弁を形成します。そして、炎症性の肉芽組織の除去、インプラント表面の清掃ののち、歯肉弁を戻し縫合閉鎖します。
この時、インプラント周囲の歯槽骨の形成術を同時に行うこともあります。

除去

インプラント周囲炎により骨吸収があまりにも著明な場合は、重度のインプラント周囲炎と診断されます。
治る見込みがないので、インプラントそのものを除去します。

インプラント周囲炎の治療法の選択基準

インプラント周囲炎の治療法は、インプラント周囲組織の状態の評価を系統的にまとめた累積的防御療法の分類に基づいて選択されます。
基準となるのが、歯周病と同じくインプラントと周囲歯肉との隙間であるインプラント周囲ポケットの深さです。

ポケット深さ3㎜以内

治療不要

ポケット深さ3㎜以内、出血あり

歯石除去や機械的歯面清掃

ポケット深さ4〜5㎜

歯石除去や機械的歯面清掃、殺菌剤による洗浄療法

ポケット深さ6㎜以上

歯石除去や機械的歯面清掃、殺菌剤による洗浄療法、抗菌療法、光線滅菌療法、外科的療法

ポケット深さ6㎜以上、動揺あり

除去

インプラント周囲炎の予防法

インプラント周囲炎は予防できます。

インプラントの寿命は何年?正しいメンテナンスと寿命がきた時の対処法

セルフケア

インプラント周囲炎の予防法としてまず挙げられるのが、ご自身で行なっていただくセルフケアです。セルフケアとは、日常のブラッシングです。
インプラントの表面だけでなく、残存歯を含め、歯ブラシだけでなく歯間ブラシなどを使って、インプラントとインプラントの間、インプラントと歯の間までしっかりケアすることが重要です。

プロフェッショナルケア

プロフェッショナルケアは、歯科医院で歯科医師や歯科衛生士などの歯科医療従事者によって行われるプラークコントロールです。
セルフケアで取りきれなかったプラークや、プラークの温床となる歯石をスケーラーなどを使って除去します。

禁煙

喫煙習慣のある方は、禁煙することも重要です。
禁煙には禁煙グッズが有用です。もし、禁煙グッズ使ってご自身で禁煙に取り組むのが難しいという方は、医療機関の禁煙外来を使うのもおすすめです。

【まとめ】インプラント周囲炎とは?症状・原因・予防・治療法について

インプラント周囲炎の症状、原因、治療法から予防法までを解説しました。
この記事では、下記のようなことがご理解いただけたのではないでしょうか。

この記事の要約

  • インプラントが脱離する原因のトップはインプラント周囲炎
  • インプラント周囲炎の原因は、歯周病、プラークコントロール不良、ブラキシズム、全身疾患など
  • インプラント周囲炎は、インプラント周囲粘膜炎とインプラント周囲炎に分けられる
  • インプラント周囲炎の治療法は、歯石除去、洗浄療法、抗菌療法、光線滅菌療法、外科的療法、除去から選ばれる
  • 治療法の選択は、インプラント周囲ポケットの深さを基準とし、随伴症状から決定される
  • インプラント周囲炎の予防法は、セルフケア、プロフェッショナルケア、そして禁煙である

インプラント治療は、適切に管理すれば半永久的な維持が可能な優れた治療法です。しかし、あくまでも適切な管理をすればという前提のもとでの話です。
インプラント周囲炎になってしまうと、インプラントの寿命に直接的な影響を与え、対応が遅れるとインプラント周囲組織の病状をさらに悪化させ、治らない事態にも陥りかねません。
インプラント治療を長持ちさせるためには、インプラント周囲炎の適切な診断と治療に加え、インプラント周囲炎そのものを防ぐことが大切です。

インプラント治療だけでなく、インプラント周囲炎について不安のある方、相談したいことがある方は、ぜひ南青山パーソン歯科にご相談ください。

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