歯周病の治療法・治し方の種類と流れは?自分でも治せるのかも解説
私たち人類は、記録に残されているだけでも紀元前という数千年も昔から歯周病に悩まされ続けてきました。昔は、歯周病になっても治療する方法がなく、抜けてしまうのをただ待っていると言った状況でした。
しかし、ここ数十年の医学の進歩に伴い、歯周病の原因が明らかになり、そして治療法も発展してきました。
この記事では、歯周病の治療法と治療の流れ、そしてセルフケアなどについてわかりやすく解説します。
この記事を読むことで、下記のような疑問や悩みが解決します。
この記事でわかる事
- 歯周病治療のポイント
- 歯周病治療の種類
- 最新の歯周病治療
- 歯周病治療の流れ
- 歯周病のセルフケア
歯周病の治療のポイント
歯周病治療のポイントは、次の通りです。
プラークコントロール
歯周病の原因は歯周病菌であり、歯周病菌が潜んでいるプラークです。
詳しくは後述しますが、歯周病治療ではプラークの除去がとても重要で、歯周病治療の成否を左右しています。
プラークリテンションファクターの除去
プラークリテンションファクターは、プラークをつきやすくしたり、除去しにくくするもののことです。
具体的には、歯石や歯列不正、適合状態のよくない補綴物などです。これらをなくすことも、歯周病治療ではとても重要です。
増悪因子の除去
歯周病は、歯周病菌がいるだけでは発病しません。引き金となる増悪因子の存在が関係しています。
歯周病の増悪因子としては、糖尿病などの全身的な病気に加え、喫煙や食習慣などの生活習慣などが挙げられます。
歯周病治療では、実際の治療と並行して増悪因子の改善も進めていきます。
歯周病治療の種類
歯周病の治し方は、大きく分けると歯周基本治療と歯周外科治療に分けられます。
歯周基本治療
歯周病治療の進行度合いに関係なく、歯周病治療に着手したらまず行われるのが歯周基本治療です。
歯周基本治療は歯周病治療の初期だけでなく、必要に応じて歯周病治療の間に繰り返し行われる治療で、歯周病治療の成否を左右する重要な治療に位置づけられています。
動機づけ
動機づけはモチベーションとも呼ばれ、歯周病治療ではたいへん重要です。
歯周病治療の基本ともいえるプラークコントロールは、歯科医院での処置だけでは完成しません。日常生活での歯磨き、食習慣などが大きく影響するからです。
歯周病治療に積極的に取り組んでいただくためにも、動機づけは歯周基本治療の重要なステップです。
プラークコントロール
プラークを取り除くプラークコントロールは、歯周病治療の中でも基礎ともいえるほど重要性を持っています。プラークコントロールが不足していると、歯周病治療は失敗するからです。
プラークコントロールは、患者さん自身で行うセルフコントロールと、歯科医師や歯科衛生士が行うプロフェッショナルコントロールに分けられます。
セルフコントロール
セルフコントロールの基本は、毎食後の歯磨きによるプラーク除去です。歯の大きさや形、歯列の形態、歯肉の状態に合わせた最適な歯磨き方法を説明し、自宅での歯磨きが効果的に行えるようにします。
同時に、食習慣の見直しも行います。
プロフェッショナルコントロール
プラークコントロールは患者さん自身による歯磨きが基本ですが、口腔内の状況や技術的な問題から清掃不十分な部位が残存することがあります。このような場合に行われるのが、プロフェッショナルコントロールです。
プロフェッショナルコントロールでは、歯科医師や歯科衛生士が歯磨きの方法の再説明に加え、残存したプラークの除去を行います。
スケーリングとルートプレーニング
スケーリングは、歯面に付着した歯石やプラークなどの沈着物をスケーラーなどを用いて除去する処置です。
ルートプレーニングは、歯根の表面に付着した病的なセメント質を除去し、歯根の表面をなめらかな状態に保つ処置です。
スケーリングとルートプレーニングは、プラークの付着を促進する歯石などを除去するため、歯周病治療の中でプラークコントロールに匹敵するほど重要な処置です。
歯周ポケット掻爬
歯周ポケット掻爬(そうは)は、歯周ポケット内部の炎症組織などを除去する処置です。歯周組織の炎症を抑え、歯周ポケットを浅くする効果があります。
抜歯
明らかに残すことはできないと判断できるほど、重度な歯周病になった歯の抜歯も歯周基本治療のひとつです。
咬合性外傷への処置
咬合性外傷は、不適切な噛み合わせが原因となり生じる歯周組織のダメージのことですが、歯周病を進行させる要素のひとつと考えられています。
噛み合わせの調整である咬合調整、被せ物や詰め物の形の修正、歯が動揺している場合の歯の固定により咬合性外傷を改善させます。
ブラキシズムの治療
ブラキシズムすなわち歯ぎしりは、無意識に食べ物が口腔内にない状況下で上下の歯を接触させる習癖です。
歯周組織に強い咬合力が伝わり歯周組織を障害するため、ブラキシズムの治療も歯周病治療では重要です。
歯周外科治療
歯周基本治療を受けたのちも歯周ポケットが残っている場合に行われるのが、歯周外科治療です。
歯周ポケット搔爬術
歯周ポケット搔爬術は、歯周ポケット内部の炎症部分とプラークや歯石がついている歯根の表面を外科的に除去する処置です。
歯根の表面をなめらかにすることで歯根と歯肉が結合しやすくし、歯周ポケットを改善させます。
新付着手術
新付着手術は、メスを使って歯肉の縁から歯周ポケットの底まで歯周ポケットの表面と炎症組織を除去する処置です。
歯肉退縮を起こしにくく、手術時間も短いのが利点ですが、歯根表面の清掃が難しいのが難点です。
歯肉切除手術
炎症を起こしている歯肉を切除する処置です。
簡単でしかも歯周ポケットを確実に除去できるのが利点ですが、歯肉退縮を起こしやすいのが難点です。
歯肉剥離掻爬手術
歯肉剥離掻爬手術は、フラップ手術とも呼ばれている歯周外科治療のひとつです。
歯肉剥離掻爬手術では、歯肉を切開して歯肉を剥離します。すると歯根表面が露出しますので、直視下で歯根表面のスケーリングやルートプレーニング、炎症組織の除去を行います。また、同時に歯肉や歯槽骨の形も整えられるのも利点です。
歯肉歯槽粘膜形成術
歯肉部分を中心とした形の異常や歯根の露出に対して行われる処置です。
小帯という筋を切除し形を整えたり、歯肉退縮した部分を歯肉で覆う歯肉弁側方移動術や歯肉弁歯冠側移動術、深い歯周ポケットを改善させる歯肉弁根尖側移動術などがあります。
歯周組織再生誘導法
歯周組織再生誘導法は、吸収性もしくは非吸収性のメンブレンという保護膜を使って、歯肉と歯根の結合を誘導し、歯周ポケットを改善させる歯周外科治療です。
歯周病の最新治療法
近年、歯周病治療に導入が進むレーザー治療について紹介します。
歯周病治療に利用されるレーザーは、主に炭酸ガスレーザーやEr.YAG(エルビウムヤグ)レーザーです。
殺菌効果
レーザーには殺菌効果があり、歯周ポケット内部にレーザーを照射すると、歯周ポケット内部の歯周病菌を効率的に殺菌できます。
無毒化
歯周病は、歯周病菌が作り出すエンドトキシンという内毒素に対して免疫系が反応することで発症すると考えられています。
レーザーには内毒素を無毒化する作用があり、歯周組織の炎症を防ぎます。
治癒促進
レーザーにより歯周ポケット内部の炎症組織を除去すると、歯根と歯肉の再付着が促進されます。結果、歯周ポケットが浅くなります。
歯石除去
Er.YAGレーザーは、歯石の除去も可能です。
レーザーでの歯石除去は、歯周ポケット内部の深いところの歯石も除去できるうえ、歯肉退縮も起こしにくいのが利点です。
歯周病の治癒について
歯周病は、原因となる歯周病菌が口腔内に常に存在し続けているため、再発性が高く、完治は難しいという特性を備えています。このため、ある程度進んだ歯周病の治癒、すなわち治療終了はたいへん難しいのが実情です。
そこで、歯周病の治療結果は治癒に加えて、病状安定の2種類に分けられています。
治癒
治癒は歯周病にかかっていた歯周組織が、健康回復した状態です。
歯周ポケットの深さが3㎜以下となり、歯肉からの出血も認めず、歯の動揺も正常範囲におさまっている状態になっていることを治癒の目安としています。
病状安定
病状安定は、歯周組織の大部分が健康状態を回復したけれど、部分的には歯周病の進行が停止しただけにとどまっている状態です。3㎜以上の歯周ポケットや、歯の病的な動揺が残っている状態などを指します。
あくまでも病変の進行が停止しているだけなため、定期的に歯周病を管理する必要があります。
歯周病治療の流れ
歯周病の症状は多岐に渡るため、あくまで一例としてご紹介いたします。
初診
まず、主訴を聴取します。そして、既往歴やアレルギー歴の有無、問診と並行して全身状態や口腔内の状況も確認します。
応急処置
腫脹や疼痛などの急性症状を認める場合は、抗菌薬などの薬物療法、口腔内消炎手術などを行なって消炎します。
歯周基本検査もしくは歯周精密検査
歯周基本検査は、歯周病治療の基本となる検査です。歯周ポケットの深さ、歯の動揺度などを記録します。
歯周精密検査は、歯周基本検査以上に詳しく歯周組織の状況を知りたいときに行う検査です。歯周ポケットの深さの測定記録箇所が増えます。また、歯周基本検査に加えて、炎症の度合いを調べるために歯肉からの出血の有無、プラークコントロールの状況もチェックします。
レントゲン検査
レントゲン写真を撮影し、歯槽骨の状況などを確認します。
診断
検査結果を総合して、歯周病の状況を診断します。
歯周基本治療
歯周病と診断されたら、歯周基本治療を行います。
再評価
歯周基本治療が終われば、歯周組織の状況を歯周基本検査、もしくは歯周精密検査で再評価します。
歯周ポケットの深さなどの改善が認めらない場合は、歯周外科治療などに進みます。
メンテナンス
歯周病の治療が終われば、歯周病の再発を予防するために定期的なメンテナンスに移ります。
歯周病のセルフケア
歯周病を自力で治すことは難しいので、セルフケアと歯科医院での治療を並行する必要があります。
ブラッシング
歯周病のセルフケアの基本となるのが食後のブラッシング、すなわち歯磨きです。
歯ブラシだけでなく歯間ブラシやデンタルフロスを使って、歯の表面、そして歯と歯の間をしっかりきれいに磨き、プラークを取り除くようにしましょう。
歯磨き粉については、歯周病予防に効果のある歯磨き粉を選ぶことをおすすめします。
洗口液
歯磨きに加え、歯周病菌の殺菌効果のある洗口液を使って、定期的にうがいをするのも歯周病のセルフケアとして有効です。
ただし、あくまでも歯磨きで物理的にプラークを除去しなければいけないので、洗口液だけ使っても効果はありません。
免疫力の向上
歯周病は、歯周病菌という細菌感染症のひとつです。細菌感染に対しては、免疫力を高めることが大切です。
睡眠をしっかりとる、ストレスを溜めこまない、栄養の取れた食生活を送る、こうしたことが免疫力を高めます。日常生活を見直して、免疫力を高めましょう。
【まとめ】歯周病の治療法・治し方の種類と流れは?自分でも治せるのかも解説
数千年に渡り人類を悩ませてきた歯周病は、ここ数十年の医学の進歩により原因が判明し、それによりさまざまな治療法が開発されました。
この記事では、下記のようなことがご理解いただけたのではないでしょうか。
この記事の要約
- 歯周病治療のポイントは、プラークコントロール、プラークリテンションファクターの除去、増悪因子の除去
- 歯周病治療は歯周基本治療と歯周外科治療に分けられる
- まずは歯周基本治療から取りかかり、歯周ポケットが残る場合に歯周外科治療を行う
- 歯周病のレーザー治療は、歯周ポケットの殺菌、毒素の無毒化、歯石除去などに効果がある
- 歯周病治療後の治癒判定は、治癒と病状安定の2種類に分けられる
- 歯周病のセルフケアのポイントはブラッシングと洗口液、免疫力の向上である
私たち人類は、歯周病の治療法がわからず数千年以上にわたって悩まされてきましたが、現在では医学の進歩により治療法も開発されています。しかし、歯周病の治療法がわかったといっても、治療には歯周病の専門知識に加え、治療の技術も欠かせません。
また、歯周病になったとき、セルフケアでの対処には限界があり、自分で治すのはなかなか難しいです。そのため、歯周病を治すには歯科医院での専門的な治療が不可欠です。
歯周病は、放置していると手遅れになり抜歯となる病気です。歯周病で悩んでいらっしゃる方は、歯周病の専門知識や経験の豊富な当院へご相談ください。