インプラントの寿命は何年?正しいメンテナンスと寿命がきた時の対処法
歯は、さまざまな理由で欠損します。
欠損歯の治療法はいくつかありますが、そのひとつがインプラントです。
そして、多くの欠損歯の治療法には“寿命”がありますが、インプラントの寿命はどれくらいなのでしょうか。
この記事では、インプラントの平均的な寿命や寿命を伸ばすためのメンテナンスなどについてわかりやすく解説します。
この記事を読むことで、「インプラントの平均寿命」や「インプラントの正しいメンテナンス法」などが理解でき、下記のような疑問や悩みが解決します。
この記事でわかる事
- インプラントの寿命は何年?
- インプラントの寿命を左右する要素は?
- インプラントのメンテナンスでは何をするの?
- インプラントの寿命がきたらどうなるの?
目次
インプラントの寿命
多くの方が気にされるのが、入れたインプラントが何年もつかでしょう。
まず、インプラントの寿命から解説します。
成功の基準
インプラント治療がうまくいっているかどうかの基準から解説します。
- 患者と歯科医師の双方が満足していること
- インプラントに疼痛などの不快症状や感染兆候などがないこと
- インプラントの動揺がないこと
- インプラントの周囲骨の吸収レベルが0.2㎜以下であること
これら全てが問題なければ、インプラント治療は成功とみなされます。
10年後の生存率
成功の基準から外れてくると、インプラントの寿命がきている可能性が疑われます。
インプラントの寿命を考えるうえで参考になるのが、10年生存率です。10年生存率は、インプラントを入れてから10年経過した時点で、どのくらいインプラントが残っているかという割合です。
厚生労働省の『インプラント治療のためのQ&A』によりますと、インプラントの10〜15年の生存率は上顎で90%程度、下顎で94%程度でした。抜歯即時埋入や骨移植を伴った埋入のケースでは87~92%程度となっています。したがって、インプラントの平均寿命は、少なくとも10年以上と考えられるといえます。
最長記録
現在のインプラントのコンセプトを考案し、インプラント治療を確立したスウェーデンのブローネマルク博士が最初にインプラントを埋めたのは1965年です。
このインプラントは、その方が亡くなるまでの間、およそ40年にわたって普通に使えていたそうです。インプラントの最も長い記録は今のところ、この40年とされています。
ほぼ半永久的な寿命
1965年の初めてのインプラント治療から数十年のインプラント治療の歴史の中で、常にインプラントは改良を繰り返されています。初期のインプラントと比べると、格段の進歩を遂げています。
国内でインプラントが広く普及し始めてから20年ほどしか経っていないので、それ以上のデータはほとんどありません。しかし、初期のインプラントで40年もったことを考えると、インプラントの寿命は半永久的といっても過言ではないかもしれません。
入れ歯やブリッジの寿命
インプラント以外の欠損歯の治療法としては、入れ歯やブリッジが挙げられます。
入れ歯やブリッジと一言でいっても、使用する材料や設計などによって大きな差がありますので、一概に寿命を説明するのは難しいです。その前提で入れ歯やブリッジの寿命をお話しするとすれば、入れ歯は4〜5年程度、ブリッジは7〜8年ほどになります。
インプラントの寿命の長さがお分かりいただけると思います。
インプラント・ブリッジ・入れ歯の違いは?費用・メリット・デメリットなどを比較
インプラントの寿命を左右する要素
インプラントの寿命を左右する要素について解説します。
インプラント周囲炎
インプラント周囲炎は、歯周病のインプラント版です。
インプラント周囲炎になると、インプラントを直接的に支えている骨が吸収され、インプラントが支えられなくなり、インプラントが抜けてしまうことになります。
インプラントが抜け落ちてしまう最も多い原因にあるのが、このインプラント周囲炎なので、インプラント周囲炎による寿命への影響の大きさがわかります。
メンテナンス不足
メンテナンスは、インプラントの周囲のプラークや汚れを取り除く処置です。
先にお話ししたインプラント周囲炎は、インプラント周囲の細菌が原因です。インプラント周囲炎の原因菌はプラークの中にいますので、メンテナンスはたいへん重要です。この辺りも、歯周病とたいへんよく似ています。
メンテナンスが不適切、もしくはメンテナンスを怠るとインプラントの寿命に悪影響を及ぼします。
不良習癖
不良習癖は、口腔内の健康に悪影響を与える可能性のあるさまざまな癖の総称です。
ブラキシズムやクレンチングなど咬合に関係する不良習癖があると、インプラントに過剰な咬合圧が加わるので、インプラントの寿命を短くしてしまいます。
喫煙習慣
タバコが歯周病を悪化させるのと同様に、インプラントの寿命も短縮してしまいます。
タバコの煙にはニコチンや一酸化炭素など、人体に有害な成分が多く含まれています。このため、喫煙するとインプラント周囲の血流が悪化します。インプラント周囲炎が発症した場合のインプラント周囲組織の治癒力も下がりますし、細菌感染への抵抗力も減少します。
インプラントの寿命に対して、喫煙習慣は大敵です。
インプラントのメンテナンス
インプラントの寿命が半永久的ほどに長いといっても、それはあくまでも正しいメンテナンスを受けていればという前提のもとの数値です。
ここでは、インプラントのメンテナンスについて解説します。
定期検診
インプラントは動きませんが、天然歯は歯根膜があるので動きます。そのため、インプラントの咬合関係は常に変化します。そこで、定期的にインプラントの咬合関係を確認する必要があります。
また、ブラッシングが適切にできているかも定期的に確認しなければなりませんし、インプラントの周囲骨の状況も異常がないかチェックが必要です。
インプラントの状況を定期的に確認することは、メンテナンスの基本です。
インプラントのクリーニング
インプラントにプラークが付着している場合は、インプラント専用の器械とペーストを使ってきれいに除去します。
歯のクリーニング
インプラントだけでなく、歯の表面についているプラークの中にもインプラント周囲炎の原因となりうる細菌が潜んでいますので、歯のクリーニングも行います。
プラークの温床となりうる歯石を、超音波スケーラーやハンドスケーラーで除去します。その後、歯面をPMTCにより滑沢になるまで研磨します。
ブラッシング指導(TBI)
メンテナンスも重要ですが、プラークコントロールの基本は日常のブラッシング、すなわち歯磨きです。
天然歯は歯肉と歯が結合していますが、インプラントには歯肉との結合はないので、どうしても隙間が生じてしまいます。この部分はプラークが付着する温床になりますので、天然歯より丁寧な歯磨きが求められます。そこで、日常のブラッシングでインプラント周囲のプラークコントロールが図れるように、ブラッシング指導も行います。
適切な歯ブラシ、歯間ブラシ、デンタルフロスを提案すると同時に、それらの効果的な使用方法を指導します。
インプラントのメンテナンス器材について
インプラントのメンテナンスでは、適切な器材を使うことも重要です。
プローブ
インプラントも天然歯と同じく、歯肉溝の状態を確認します。歯肉溝の深さを調べる器材は、インプラントもプローブを使います。
インプラントのプローブは、インプラント専用のプローブが推奨されています。インプラント専用のプローブは天然歯用のプローブよりやわらかく、インプラントを痛める心配がありません。
スケーラー
インプラントの場合は、インプラントスケーラーというインプラント専用に作られたスケーラーを使ってクリーニングを行います。
インプラントスケーラーも、天然歯用のスケーラーよりやわらかく、インプラントのメンテナンスに有用です。
インプラントの寿命がきたときの対処法
万が一、インプラントの寿命がきた場合の対処法は以下のとおりです。
インプラントの再治療
寿命を迎えたインプラントの近くに、もう一度インプラント治療を行うという選択肢です。
理想的な選択肢ですが、あくまでもインプラント治療に十分な骨量が残存しているという条件のもとでの選択となります。そのため、骨量によっては再治療が受けられないことも考えられます。
義歯
義歯は、いわゆる入れ歯です。
残存歯がある場合は、残存歯をクラスプをかける鉤歯として利用する部分床義歯、残存歯が皆無の場合は全部床義歯になります。
義歯は骨量に左右されないので、あらゆる欠損症例に対応しているうえ可撤式なので、清掃性に優れている利点があるのですが、大きさの点から違和感が大きいのが難点です。
保険診療の義歯は、レジン床義歯というプラスチック製の義歯が選ばれることが多いです。
自費診療の義歯では、金属でベースを作る金属床義歯という選択肢もあります。金属床義歯は厚みが薄く、飲食物の温度を感じやすいので、レジン床義歯より快適です。
ブリッジ
ブリッジは、欠損歯の隣在歯に装着したクラウン、もしくはインレーと欠損歯の代替となるポンティックという人工歯を結合させた補綴物です。
義歯と異なり、歯の形に近似しているので大きさや舌感に違和感が少ないです。
ブリッジは、欠損歯が連続して2本までなど欠損部位の状態に制限があるうえ、隣在歯がしっかりしていなければ適応できません。
ブリッジも保険診療と自費診療に分けられます。
保険診療のブリッジは、金銀パラジウム合金を使った銀色の金属製ブリッジです。
自費診療では、セラミッククラウンを使った審美性に優れたセラミックブリッジや金合金を使ったブリッジが選べます。
【まとめ】インプラントの寿命は何年?正しいメンテナンスと寿命がきた時の対処法
インプラントの寿命について解説しました。
この記事では、下記のようなことが分かったのではないでしょうか。
この記事の要約
- インプラントの10年生存率は90%以上、最長記録はおよそ40年
- インプラントの寿命には、インプラント周囲炎、メンテナンス、不良習癖、喫煙習慣などが影響する
- インプラントのメンテナンスは、口腔内の状況確認、プラークコントロール、セルフケアなどを行う
- インプラントのメンテナンスは、インプラント専用の器材が推奨される
- インプラントが寿命を迎えた場合の選択肢は、インプラントの再治療、入れ歯、ブリッジ
インプラントは、欠損歯の治療に革新をもたらした優れた治療法です。しかし、一度入れたら終わりではありません。インプラントを保たせるには、正しいメンテナンスが必要ですし、メンテナンスを受けていても寿命を迎えることもあります。
逆を言えば、正しくメンテナンスを続ければ、数十年に渡り保つことも不可能ではありませんが、そのためにはインプラントの専門的な知識に加え、治療経験や技術も欠かすことはできません。
インプラントの予後に不安のある方、お悩みの方は、ぜひ当院にお越しください。