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上唇小帯付着異常を大人まで放置するデメリットと大人になってからの上唇小帯切除について

上唇小帯付着異常を大人まで放置するデメリットと大人になってからの上唇小帯切除について

上唇小帯は上口唇から上顎前歯部にかけて、歯列の外側である口腔前庭に存在しているひだ状の軟組織です。
上唇小帯の形態や位置などに異常がある場合、子供の頃に治療しておくことが望ましいとされていますが、治療せず大人になるまで放置しているとどのような影響が出るのでしょうか。

この記事では、大人の上唇小帯付着異常について解説します。
この記事を読むことで、上唇小帯付着異常の症状や大人まで放置していることによるデメリットなどが理解でき、下記のような疑問や悩みが解決します。

この記事でわかる事

  • 上唇小帯付着異常とは何か
  • 上唇小帯付着異常の症状はどのようなものなのか
  • 上唇小帯付着異常を大人になるまで放置しているとどうなるのか
  • 大人の上唇小帯付着異常の治療法はあるのか
  • おすすめの上唇小帯付着異常の治療法は何か
  • 大人の上唇小帯付着異常の治療費はどれくらいか

上唇小帯付着異常について

上唇小帯付着異常について解説します。

上唇小帯付着異常とは

上唇小帯付着異常は、上唇小帯の位置や形状などが正常範囲から逸脱し、上唇小帯が不適当な位置や形状になっている病態です。

上唇小帯付着異常の症状

上唇小帯の付着位置や形状に異常が認められたとしても、それ自体に疼痛や腫脹などの炎症所見を認めることはほとんどないので、「痛い」と訴えるような方はまずありません。
付着異常を伴う上唇小帯を損傷した際に自発痛や出血を認める程度です。

上唇小帯付着異常の原因

上唇小帯付着異常の原因は、先天奇形です。
先天奇形とは、“生まれつき”という意味ですが、歯の欠損後の欠損部位の周囲歯槽骨の吸収に伴って生じる後天的な原因もあります。

大人の上唇小帯付着異常の合併症

上唇小帯付着異常の治療は、10歳後半までに行うことが望ましいとされています。
この時期を過ぎて放置していると、次のような症状の原因となる可能性があります。

歯列不正

上唇小帯付着異常の最も多い合併症が、歯列不正です。
上顎の中切歯間の切歯乳頭に連結するほどの上唇小帯の肥厚症例では、中切歯間の間隙が閉鎖できず、正中離開というすきっ歯として知られる歯列不正の原因となります。
正中離開を認める上唇小帯付着異常の多くでは、中切歯の軽度の捻転も認めます。また、上唇小帯付着異常により上口唇の可動域が制限されると、上顎骨の成長発育にも悪影響が及びます。そして、上顎骨の劣成長による下顎前突症や上顎後退症などの顎骨の形態異常、すなわち顎変形症の原因になることもあります。

発語障害

上唇小帯の肥厚が著しいうえに上唇小帯が切歯乳頭に連結している場合は、上口唇の可動範囲が狭まり、発音に影響する発語障害を引き起こすことがあります。

口唇閉鎖不全

上唇小帯の付着位置に異常があり、中切歯間に及ぶほど長い場合は上唇小帯の緊張が強くなります。すると、上口唇の可動域にも影響が出ます。
上唇小帯の緊張具合によっては、上下の口唇閉鎖に影響することがあります。

齲蝕症や歯周病

上唇小帯の付着位置が中切歯間に及ぶような場合、歯ブラシが当たりやすいうえ、口腔前庭が狭くなるのでブラッシングが困難になります。特に前歯部のプラークコントロールが低下しやすく、齲蝕症や歯周病のリスクが高まります。
また、齲蝕症を発症した場合の治療も、上唇小帯付着異常があると困難になることもあります。

義歯装着障害

上唇小帯の付着位置や太さによっては、義歯の床縁に干渉することがあります。
義歯の床縁が上唇小帯に接触すると、上唇小帯に義歯性潰瘍を形成し、痛みや腫れを訴えることがあります。また、義歯の床縁の形態や位置は義歯の安定に欠かせない部分ですので、義歯の不安定化の原因にもなります。

大人の上唇小帯付着異常の治療法

大人の方の上唇小帯付着異常の治療法は、上唇小帯切除術です。

上唇小帯切除術(外科用メス)

上唇小帯切除術は上唇小帯を切除し、付着異常を改善させる処置です。この外科用メスを使った術式は、最もベーシックな上唇小帯切除術ですが、出血量が多いといったデメリットがあります。
局所麻酔ののち、上唇小帯をV字型に切開します。そして、骨膜上から剥離し、モスキート鉗子やペアン鉗子で固定してから切断・切除します。切除後の創面は広い菱形になります。
創面の周囲粘膜の剥離を行い、周囲粘膜の緊張を和らげます。
5-0ナイロン糸などを用いて、左右の創縁を合わせて縫合閉鎖します。歯間部にまで侵入していた上唇小帯の切除創面は縫合は難しいので、サージカルパック、もしくはコーパックなどの歯周包帯材で保護します。

上唇小帯切除術(電気メス)

電気メスを使った上唇小帯切除術もあります。
局所麻酔ののち電気メスで小帯を切除し、上口唇の可動域を拡大します。
電気メスは止血能に優れているうえ、処置時間も短くてすむという利点があります。その反面、熱侵襲が強いので創面が開いたり、治癒が遅くなったりする可能性があります。また、術後の疼痛や腫脹、瘢痕形成も生じやすいという難点もあり、心臓への影響も懸念点として挙げられます。

上唇小帯切除術(レーザーメス)

上唇小帯切除術は、従来から行われている外科用メスや電気メスを使った手術法以外に、レーザーメスを使った術式もあります。
炭酸ガスレーザーには、外科用メスや電気メスでの手術法にはない多くの利点があり、当院では炭酸ガスレーザーを使った上唇小帯切除術のみ行っています。

  1. 止血能が高い
  2. 術後の瘢痕形成が少ない
  3. 熱侵襲が少ないので治癒が良好
  4. 深部到達しないので照射表面にしか作用しない
  5. 縫合を省略できる
  6. 処置時間が短い

近年、レーザーメスを使った上唇小帯切除術は、利点の多さからたいへん注目されています。

レーザーによる上唇小帯切除術についてはこちら

大人の上唇小帯付着異常の治療費

大人の上唇小帯切除術は保険診療の適応を受けており、保険診療では口唇小帯形成術とよばれています。
医療機関でのお支払額は3割負担の方で、初再診料や局所麻酔薬、処方箋代などを除き、3,000円程度です。
レーザーメスを使った口唇小帯形成術の場合、レーザー機器加算として150円が加算されます。
なお、上唇小帯付着異常によって引き起こされた歯列不正、齲蝕症や歯周病などの治療費は別途必要になります。

【まとめ】上唇小帯付着異常を大人まで放置するデメリットと大人になってからの上唇小帯切除について

大人の上唇小帯付着異常について解説しました。
この記事では、下記のようなことがご理解いただけたのではないでしょうか。

この記事の要約

  • 上唇小帯付着異常は、上唇小帯の付着位置や太さに異常が認められる病態
  • 上唇小帯付着異常を放置していると歯列不正や齲蝕症、歯周病の原因となる
  • 上唇小帯付着異常は、歯以外にも構音障害や口唇封鎖障害を引き起こすことがある
  • 大人の上唇小帯付着異常の治療法は上唇小帯切除術
  • 外科用メスでの手術は出血量が多い、電気メスでは歯肉や心臓への影響がある
  • レーザーメスなら、出血や歯肉、心臓へのリスクがほとんどないうえ、手術時間も短く、予後が良い
  • 大人の上唇小帯切除術も保険診療の適応があり、費用は3,000円程度

上唇小帯付着異常は、可能な限り10歳までに治療を受けるのが望ましとされています。
もし、上唇小帯付着異常を適切な時期に治療せずに放置していると、さまざまな症状の原因となります。
上唇小帯付着異常は、それ自体は疼痛や腫脹などの炎症症状の原因となることは稀です。
自覚症状に乏しいため治療の機会を失いやすく、そのまま大人になると、さまざまな症状の原因となります。
例えば、正中離開の原因となる上唇小帯付着異常では、上唇小帯切除術だけでは歯列不正は改善しないため矯正治療も必要です。すなわち、上唇小帯切除術の知識や経験だけでなく、上唇小帯付着異常によって引き起こされた症状に対する専門知識や治療経験も要求されます。

大人の方で上唇小帯付着異常を疑う方、不安のある方は南青山パーソン歯科にご相談ください。担当の歯科医師が丁寧に対応させていただきます。

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