骨が足りなくてもインプラントができる骨造成とは?成功率や術後の腫れなどの経過も解説
インプラント治療は齲蝕症や歯周病などにより、抜歯された歯が有していた形態や機能を回復させる優れた治療法ですが、十分な骨量や骨質が欠かせません。
骨量や骨質が不足していると、インプラントが安定しなくなります。
そこで、骨量や骨質が足りない場合に行われるのが骨造成と言われるものです。
この記事では、インプラント治療における骨造成について解説します。
この記事を読むことで、インプラント治療の骨造成術とその成功率、そして骨造成術後の経過などが分かり、次のような疑問や悩みが解決します。
この記事でわかる事
- 骨造成とは何か
- 骨造成にはどのような種類があるのか
- 骨造成では何を使っているのか
- 骨造成の成功率はどれくらいなのか
- 骨造成のメリットとデメリットには何があるのか
- 骨造成を受けた後の経過はどのような感じなのか
目次
骨造成について
まずは、インプラント治療と骨の関係から骨造成について解説します。
インプラント治療と骨
現代のインプラント治療の基礎となるのが、オッセオインテグレーションです。
オッセオインテグレーションとは、チタンと骨が結合する現象です。チタンで作られたインプラントが、オッセオインテグレーションを起こし骨と結合することで、インプラントの安定を図っています。
骨の量が十分確保されているとインプラントもしっかり安定しますが、反対に骨の量が足りないとインプラントと骨の結合力が不足し、インプラントが安定しなくなってしまいます。
骨造成とは
骨造成は、インプラントの安定に不足している骨の厚みや幅を十分な量とするために行われる外科処置です。
骨造成と骨増生の違い
骨造成も骨増生も、どちらも「こつぞうせい」と読みますが、両者は全く異なります。
骨造成は“外科手術で骨を大きくすること”、骨増生は“骨の細胞を生物学的に増やすことで骨を大きくすること”です。
インプラント治療では外科的に骨の幅や高さを大きくしているので、インプラント治療のこつぞうせいは、“骨造成”ということになります。
移植材の種類
骨造成に用いられている材料を移植材といいます。移植材は、大別すると“自家骨” “人工骨” “他家骨” “異種骨”の4つがあります。このうち、現在、骨造成に用いられているのは、自家骨と人工骨です。
移植材には、新生骨を形成する骨形成能や骨を形成する細胞を集める骨誘導能、骨を形成する足場となる骨伝導能が求められます。
自家骨は、これらの全てを備えているので最も相応しい移植材ですが、口腔内外から採取する必要があるうえ、量的に限度もあります。
人工骨は体内から採取する必要もなく、量的な制限もないのですが、骨形成能や骨誘導能がなく、その点で自家骨に劣ります。
骨造成の成功率
骨造成の成功率は、骨造成術の種類、骨造成材料、骨造成を受ける部位の骨の状態などによって差がありますが、80〜90%ほどという研究もあり、比較的高いと言えます。
骨造成の種類
現在行われている主な骨造成術は次のとおりです。
サイナスリフト
サイナスリフトは、上顎用の骨造成術です。骨の厚みが5㎜もないほど、かなり骨の厚みが不足している場合に行われる骨造成術です。
サイナスリフトでは、まず上顎臼歯部の頬側歯肉を切開し、上顎骨を露出させます。上顎骨の一部を開窓し、そこから上顎洞粘膜を剥離し、上顎骨と上顎洞粘膜の間に移植材を入れる骨造成術です。
ソケットリフト
ソケットリフトも、上顎用の骨造成術です。骨の厚みは5㎜以上あるけれど、インプラントをするには骨の厚みが足りないという場合に用いられます。
ソケットリフトでは、インプラントの埋入窩を形成する際、上顎洞粘膜ギリギリまでドリリングします。そして、そこから上顎洞粘膜を持ち上げ、移植材を入れる骨造成術です。
骨誘導再生法(GBR)
骨誘導再生法は、上顎骨だけでなく下顎骨にも応用できる骨造成術です。
骨誘導再生法では、骨量が不足している部位に入れた人工骨と歯肉との間にメンブレンという膜を入れます。人工骨をメンブレンで保護し、人工骨を足場として骨の再生を促進させる骨造成術です。
骨移植
骨移植は、ご自身の口腔内(オトガイ部、下顎枝など)、口腔外(腸骨や脛骨など)から骨を採取し、不足している部位に移植する骨造成術です。
骨移植は、オッセオインテグレーションを生じるのに必要な新生骨を最も増生させられる骨造成術ですが、骨採取という侵襲性の高さに難点があります。
骨造成のメリット
骨造成を受けることで、次のようなメリットが得られます。
インプラントの安定性の向上
骨造成術を受けると、インプラント治療に適した骨量が得られます。
骨量が増加すると、適切な部位への埋入が可能になるうえ、オッセオインテグレーションの獲得によりインプラントの安定性が高まります。
インプラント手術の安全性の向上
骨量が少ない方へのインプラント埋入には、例えば上顎の奥歯ではインプラントが上顎洞に入りこむ、下顎の奥歯では舌側の歯槽骨を突き破り舌神経を障害するなどのリスクがあります。
これらは一例ですが、骨量が増えるとインプラントが骨の外に突き抜けるリスクが減るので、手術の安全性が高まります。
審美性の向上
前歯部の歯槽骨は臼歯(奥歯)部の歯槽骨と比べて、骨の幅が少ないです。骨幅が薄い場合、インプラントの埋入窩の形成により、骨の高さが低下してしまうこともあります。
骨の高さが低下すると、歯肉もそれに伴って退縮しますので、そのままでは歯冠長の長い上部構造(インプラントの歯冠)になり、審美性を損なってしまいます。
骨造成術により骨量を増やせれば歯肉退縮が改善され、隣接歯とバランスの取れた上部構造にすることができます。
骨造成のデメリット
骨造成のデメリットには、次のようなものが挙げられます。
治療費の増加
骨造成術は骨造成術の種類、使用する材料、適応部位の骨の状態などによって差がありますが、おおむね15〜50万円です。
この金額がインプラント治療の治療費に加算されるので、治療費が増えてしまいます。
治療期間の延長
骨の再生には8〜10ヶ月ほどの日数が必要なので、骨造成手術を行なった場合のインプラント治療の治療期間は12ヶ月ほどになります。
骨造成術を行わないインプラント治療の治療期間は4〜6ヶ月ほどなので、治療期間が長くなるのも骨造成のデメリットのひとつです。
術後炎症反応
骨造成術も腫脹や疼痛などの術後炎症反応は起こります。
治癒不全
喫煙習慣のある方や糖尿病など創傷治癒遅延をもたらすような全身疾患のある方の場合、骨造成術後の治癒に問題が起こる可能性から、骨造成の適応外となることもあります。
術後感染
口腔内細菌が骨造成術の創部に感染を起こすことがあります。感染を生じた移植材は、骨の再生は期待できなくなることが多いです。
移植材の漏出
サイナスリフトやソケットリフトの場合、上顎洞粘膜を穿孔すると移植材が上顎洞内に漏出することがあります。移植材が上顎洞内に漏出すると、副鼻腔炎の原因になります。
骨造成後の経過
骨造成後の経過について解説します。
術後炎症反応
骨造成術後も手術侵襲による炎症反応は起こります。術後の炎症反応は、術野の毛細血管の拡張により生じます。毛細血管の拡張により、血流量が増加することで熱感が出ます。
そして、拡張した血管から血液成分が滲出し腫脹が起こり、血液成分の滲出による浮腫がもたらす組織圧の上昇と発痛物質の刺激が疼痛を引き起こします。
術後の腫脹は、術後24〜48時間でピークを迎え、その後消退していきます。疼痛もおおむね同じです。
抜糸
骨造成術の創部を閉創した縫合糸は、5〜7日ほどで抜糸します。
【まとめ】骨が足りなくてもインプラントができる骨造成とは?成功率や術後の腫れなどの経過も解説
インプラント治療における骨造成について解説しました。
この記事では、下記のようなことがご理解いただけたのではないでしょうか。
この記事の要約
- 骨造成は外科的に骨量を増やす方法、骨増生は生物学的に骨量を増やす方法
- 移植材としては自家骨や人工骨が用いられている
- 骨造成の成功率は80〜90%以上とたいへん高い
- 骨造成術にはサイナスリフト、ソケットリフト、骨再生誘導法、骨移植などがある
- 骨造成術のメリットは、骨量の獲得、審美性の向上、手術の安全性の向上など
- 骨造成術のデメリットは、治療費の増加、治療期間の延長、術後の炎症反応など
- 骨造成術後の経過として、術後の腫脹のピークは24〜48時間ほど、抜糸は約1週間後
インプラント治療は、欠損歯が有していた形態や咬合機能などを回復させる優れた治療法ですが、埋入部位の骨量が不足していると成功はおぼつかなくなります。そこで、インプラント治療には不足している骨量を増やすために行われるのが、骨造成術です。そして、埋入部位の骨条件に合わせた最適な骨造成術を選ぶことが大切です。
インプラント治療で骨の状態に不安のある方、他院で骨量不足を指摘されインプラント治療が受けられなかった方は、ぜひ南青山パーソン歯科にご相談ください。