インプラントが保険適用される条件と保険適用外の理由は?
欠損歯の治療法にはインプラントの他、ブリッジや義歯などさまざまな選択肢があります。それらの中からどの治療法を選ぶのか、その選択基準はさまざまですが、そのひとつが保険適用の有無です。
ブリッジや有床義歯(入れ歯)が保険適用を受けていることは、よく知られていると思いますが、インプラントも実は条件付きながら保険適用を受けています。
では、インプラント治療で保険が適用されるには、どのような条件が必要なのでしょうか?
この記事では、保険診療で受けられるインプラント治療について解説します。
この記事を読むことで、インプラントを保険診療で受けるための条件と、保険適用外となることが多い理由などがわかり、次のような疑問や悩みが解決します。
この記事でわかる事
- インプラントの保険適用条件は何か
- 保険適用の場合、メンテナンスも保険で受けられるのか
- 保険適用外となる理由は何か
- 医療保険は適用されるのか
目次
保険適用となるインプラント治療の名称
保険診療ではインプラント治療ではなく、広範囲顎骨支持型装置とよばれています。
この広範囲顎骨支持型装置は、平成24年度の診療報酬改定で先進医療として保険導入されました。
自費診療のインプラント治療と混乱しないためにこのような名称になったのですが、ここではわかりやすいように、広範囲顎骨支持型装置ではなくインプラント治療と表記します。
保険適用となるインプラント術式
インプラント治療は、標準的な治療法である2回法と1回法に分けられます。
2回法は1次手術で顎骨にインプラント体を埋入したのち、アバットメントを連結せずに創部を一次閉鎖し、骨組織の治癒後、アバットメントを連結し口腔粘膜上に露出させる術式です。
1回法は、顎骨内にインプラント体を埋入し、アバットメントを口腔粘膜上に露出させることまでを1回で行う術式です。
保険診療では、どちらも保険適用を受けています。
保険適用となる条件
インプラント治療が保険適用を受けられるのは、下記の条件のいずれかを満たしており、かつブリッジや義歯(入れ歯)では咀嚼機能を回復できない症例に限られます。
広範囲な顎骨欠損もしくは歯槽骨欠損症例など
対象となるのは、顎骨腫瘍・顎骨の嚢胞性疾患・顎骨の骨髄炎・外傷などにより、4歯以上の範囲で顎骨や歯槽骨を広く欠損した症例や、欠損箇所を骨移植で再建した症例です。
唇顎口蓋裂などの先天性疾患による顎堤形成不全症など
対象となるのは、医科の主治医から唇顎口蓋裂や外胚葉異形成症と診断された顎堤の形成不全症のうち、連続して3分の1顎以上の歯の欠損がある症例です。
6歯以上の先天性部分無歯症など
生まれつき歯がない6本以上の無歯症、もしくは前歯や小臼歯の永久歯の3歯の放出不全と、3分の1顎以上に及ぶ歯の欠損を認める症例です。
保険適用となる医療機関側の条件
インプラント治療を受ける医療機関にも条件が課せられています。
歯科医師
5年以上の歯科診療の経験を持ち、かつインプラント治療の3年以上の診療経験を持つ常勤の歯科医師が2名以上いること
診療体制
当直体制が整備されており、24時間歯科医師が1名以上待機していること
施設
- 歯科医院や有床診療所ではなく、病院であること
- 歯科、もしくは歯科口腔外科を標榜している保険医療機関であること
- インプラント治療用だけでなく、その他の医療機器の保守管理、診療に必要な医薬品の安全管理体制が整っていること
- インプラント治療に必要な検査機器が整備されていること
保険適用の条件が厳しい理由
保険適用を受けるにあたって、インプラント治療に厳しい条件が課せられているのには、次のような理由があると考えられます。
保険診療と自費診療の違い
保険診療制度における診療方針は、療養担当規則の第12条から第23条に定められています。ここに診療の対象となるのは、“疾病又は負傷”とあります。
また、診療に用いることができる歯科材料についても、“厚生労働大臣が定める歯科材料以外の歯科材料”の使用が禁止されています。すなわち、病気や外傷以外の美容などの医療や保険診療に記載のない歯科材料を使った治療は、保険診療の適用外になります。
自費診療では、療養担当規則の規制を受けることはありませんので、美容医療を始め、保険診療で受けられないさまざまな治療を受けることができます。
保険診療が適用される場合の理由
インプラント治療の特徴のひとつは、優れた咬合力による咀嚼機能の回復力です。
保険診療の適用となる症例では、ブリッジや有床義歯で咀嚼機能を回復させるのは、たいへん困難です。インプラント治療以外に選択肢がないと言っても過言ではない状態なので、保険診療の対象となっています。
保険診療の適用外となる理由
インプラント治療に至る原因、すなわち歯を欠損した原因の大多数は、齲蝕症や歯周病なので、保険適用となる条件に合致しません。また、齲蝕症や歯周病などにより失われた咀嚼機能の回復であれば、ブリッジや有床義歯でも対応できます。
保険適用のブリッジや有床義歯は機能性が重視され、審美性は重視されていません。
一方、インプラント治療は、優れた咬合力から咀嚼機能の回復能力は非常に高いのですが、それに加え審美性の高さも備えています。
このため、インプラント治療は美容医療の一種とみなされ、保険診療には広く導入しにくいと考えられています。
医療保険とインプラント治療
民間の医療保険は、保険診療より適用範囲が広く設計されてます。
平成24年3月31日までは、医療保険でインプラント治療が先進医療の一つとして認められていましたが、それ以降は認められなくなりました。平成24年3月31日までに加入した医療保険に先進医療特約がついている方は、インプラント治療にも使えますが、ついていない方やそれ以降に加入された方は医療保険も使えません。
なお、先進医療特約にはさまざまな適用条件があるので、それらを満たしているかどうかの確認を忘れないようにしましょう。
【まとめ】インプラントが保険適用される条件と保険適用外の理由は?
インプラン治療に対する保険適用について解説しました。
この記事では、下記のようなことがご理解いただけたのではないでしょうか。
この記事の要約
- インプラントは、腫瘍や嚢胞などによる広範囲の顎骨欠損症例、先天性疾患による多数歯欠損などに限り保険適用を受けている
- 保険診療でインプラントを受けるには、常勤歯科医師が2名以上おり、当直体制が整っている病院歯科でなければならない
- インプラントの保険適用が限定的なのは、審美性の高さから美容医療の一種とみなされているため
- 民間の医療保険でも基本的にインプラントの適用はない
欠損歯に対する治療法は、ブリッジや義歯、インプラントが代表的です。
ブリッジや義歯と異なりインプラント治療は高額な治療法なので、保険診療の適用を受けて少しでも治療費を下げたいところですが、保険適用のハードルは非常に高いというのが実情です。
この記事に挙げた条件に合う可能性があり、保険適用があるかどうか相談したい方は、南青山パーソン歯科にぜひご相談ください。