水平埋伏智歯の抜歯後に注意するポイントは?腫れ、痛みや日常生活について

「親知らずが横向きに生えているので、切開して抜く必要があります」と歯科医院で診断され、不安を感じてはいませんか?
水平埋伏智歯(すいへいまいふくちし)の抜歯は、歯肉を切開したり、歯を分割したりといった処置が必要になるため、通常の抜歯よりも術後の腫れや痛みが気になりやすいものです。
抜歯後にどのような経過をたどるのか、日常生活で何に気をつければよいのかを事前に知っておくことは、スムーズな回復のために非常に重要です。
この記事では、水平埋伏智歯を抜歯する際の手順や難易度、術後の正常な治癒経過、そして生活上の注意点を詳しく解説します。
この記事を読むことで、抜歯当日から数か月にわたるお口の中の変化や、ドライソケットなどのトラブルを防ぐための適切なセルフケア方法を理解でき、下記のような疑問や悩みを解決します。
この記事でわかる事
- 水平埋伏智歯の抜歯は、具体的にどのような手順で行われるのか
- 抜歯後の腫れや痛みはいつ頃がピークで、いつまで続くのか
- 術後の食事、入浴、運動、喫煙などはいつから可能なのか
- 抜歯した部分の「うがい」や「歯磨き」で気をつけるべきポイントは何か
- 「ドライソケット(歯槽骨炎)」とは、どのような状態でどう防げばよいのか
目次
水平埋伏智歯の抜歯について
水平埋伏智歯は、近心に強く傾斜し萌出できていない第3大臼歯で下顎骨に多いですが、上顎の第3大臼歯にも見られることがあります。
水平埋伏智歯の抜歯は通常の抜歯と異なり、歯肉骨膜弁の形成や歯冠分割が必要です。
水平埋伏智歯の抜歯の概略
一般的に水平埋伏智歯は、智歯周囲の浸潤麻酔後、まず歯肉を切開し、粘膜骨膜弁を形成します。
歯冠の周囲骨を削除し、歯冠の最大豊隆部までを明示します。ついで歯冠を分割し、歯冠を摘出します。歯冠の摘出後、歯根を削除し、歯根を摘出します。抜歯窩を掻爬し、残存歯質がないことを確認したのち、粘膜骨膜弁を復位し、縫合して閉鎖します。
水平埋伏智歯の状態によって、粘膜骨膜弁の形成や歯冠の最大豊隆部までの露出が不要な場合など、抜歯の術式の細部に差が生じます。
水平埋伏智歯の難易度
水平埋伏智歯の難易度は共通ではなく、埋伏智歯の傾斜方向、深さ、隣接歯との位置関係、頬舌方向、下顎枝の立ち上がり位置、下顎管との位置関係などによって異なります。
一般的に第二大臼歯の歯頚部より深く、下顎枝の立ち上がりが歯冠に広く重なり、歯冠の傾斜がきついほど難易度が高まります。
水平埋伏智歯の抜歯後の患部
水平埋伏智歯の抜歯後の患部について、正常な治癒過程と問題のある治癒過程に分けて解説します。
正常な治癒過程
治癒過程が正常な場合、抜歯当日は抜歯窩が血餅で満たされます。
抜歯から4〜5日目、抜歯創面の辺縁から上皮化が始まります。
抜歯から約1週間後、血餅が幼弱な肉芽組織に変化します。
抜歯から3〜4週間で肉芽組織が器質化し、線維性の結合組織に変わります。そして、線維性の結合組織に仮骨の形成が始まります。
なお、仮骨形成が始まる頃には、創面は完全に上皮組織に覆われています。
抜歯から6〜12ヶ月で仮骨が骨になり、成熟した骨組織が形成されます。
問題がある治癒過程
水平埋伏智歯の抜歯後、血餅の欠如によるドライソケット(歯槽骨炎)や、残った鋭利な骨縁は強い痛みや圧痛を招きます。
歯槽骨炎
歯槽骨炎は抜歯窩の骨面が露出し、表在性の骨壊死を起こした状態です。
ドライソケット、抜歯後治癒不全ともよばれており、抜歯窩が血餅で満たされなかった場合や炎症の急性期に抜歯した場合に起こりやすいです。
歯槽骨炎を起こすと、強い疼痛が続くことが多いです。
鋭利な骨縁
不規則な骨吸収を伴っていた場合など、抜歯後に鋭利な骨縁が残ることがあります。
鋭利な骨縁が残った場合、歯肉の圧痛が続く原因になります。
水平埋伏智歯の抜歯後の注意点
水平埋伏智歯の抜歯を受けた後は、圧迫止血や飲食の延期、入浴など、いくつかの注意点があります。
創部の安静
抜歯創は少なくとも上皮化が始まるまでの間、安静を保つ必要があります。
不必要に手指はもちろん、舌で触れたり、歯ブラシを当てたりしてはいけません。
圧迫止血
抜歯後は少なくともガーゼなどを固く丸め、10分ほど噛んで止血します。
ほとんどの場合この圧迫止血ができます。
術後出血時の対応
圧迫止血により止血に成功したと思われても、数時間後もしくは数日後に出血することもあります。その場合は、抜歯直後と同様にガーゼを10分ほど噛みます。その間は、ずっと噛み続ける必要があり、ガーゼを外すのは避けましょう。
術後の飲食
抜歯後の飲食については、麻酔が奏効している間は避けてください。麻酔の持続時間は、浸潤麻酔なら2〜3時間、伝達麻酔なら4〜6時間です。
麻酔が切れた時の痛みが心配で麻酔が効いている時に飲食をする場合は、創部を刺激しないよう、やわらかめで熱すぎず冷たすぎない食べ物を選び、抜歯部位の反対側の歯を使って、ゆっくり食事をします。麻酔がさめた後でも、同様に注意しながら食事をとります。
口腔ケア
抜歯創への細菌感染のリスクを低減するためにも、抜歯後の口腔ケアは重要です。
ブラッシング時には、歯ブラシが創部に接触しないよう気をつけなければなりません。また、歯間部分を清潔に保つためにも、歯間ブラシやデンタルフロスを使いましょう。
歯磨剤は抜歯後に変える必要はありません。普段お使いいただいているものを使っていただければ大丈夫です。
ケア後の含嗽(うがい)は、強くうがいすると血餅が脱落する可能性があるので、優しくするのが大切です。
ケアの頻度は毎食後ですので、1日3回はブラッシングしてください。
抜歯当日の入浴
抜歯当日の入浴は避け、原則的にシャワー浴です。
抜歯当日に入浴すると全身の血流が活発化するため、抜歯創からの出血を生じる可能性があります。
翌日以降は、創部からの出血を認めなければ入浴可です。
内服薬
抜歯後は、抗菌薬と消炎鎮痛薬が処方されます。用法容量を守り、歯科医師もしくは薬剤師の指示通りに内服しましょう。
消炎鎮痛薬は頓服の場合、服用間隔を6時間程度はあけるようにしなければなりません。
なお、抗菌薬については術後の感染予防を目的としたものなので、薬剤耐性菌の発生を防ぐ意味から処方しないこともあります。
術後の運動など
抜歯当日は術後出血の原因となるので、基本的にスポーツは避けてください。
翌日以降、創部からの出血がなく疼痛がコントロールできる状態にあれば再開可です。
禁煙
タバコは局所の血流障害の原因となり、抜歯窩の治癒を阻害します。喫煙習慣のある方は、少なくとも抜歯から数日間は禁煙です。
抜歯後の経過
水平埋伏智歯抜歯後の炎症は48時間以内にピークを迎え、麻酔消失後の痛みや治癒不全(ドライソケット)には適切な処置が必要になります。
麻酔の持続時間
抜歯後の麻酔の持続時間は前述した通り、浸潤麻酔で2〜3時間、伝達麻酔で4〜6時間ですが、抜歯部位の骨の状態や体質により、持続時間は前後します。
炎症反応の経過
抜歯後の炎症反応は、腫脹、疼痛、熱発、発赤、そして機能障害です。抜歯後の機能障害は、開口障害が代表的です。
一般的に炎症反応は抜歯から24〜48時間でピークとなり、それから数日かけて軽減していきます。炎症反応に対しては、消炎鎮痛剤の処方で対応することが一般的ですが、冷罨法を併用することもあります。
抜歯後治癒不全
抜歯後治癒不全は、問題のある治癒過程を指し、前述した歯槽骨炎(ドライソケット)が代表的です。
歯槽骨炎を認めた場合は、抗菌薬を含むステロイド軟膏の注入やタンポンガーゼの留置などにより、骨面を保護します。
治療には日数が必要で、肉芽組織が骨面を被覆するまで続けます。
【まとめ】水平埋伏智歯の抜歯後に注意するポイントは?腫れ、痛みや日常生活について
水平埋伏智歯の抜歯後の経過や注意点、そして起こりうるトラブルへの対応策について、詳しく解説しました。
この記事では、下記のようなことが理解できたのではないでしょうか。
この記事の要約
- 水平埋伏智歯の抜歯は歯肉の切開や歯冠の分割が必要であり、歯の深さや傾斜によって難易度が変わる
- 抜歯後の正常な治癒のステップは、当日の血餅(血の塊)形成から始まり、約1週間で肉芽組織へ、数か月かけて成熟した骨へと変化していく
- 抜歯後の日常生活の注意点は、術後当日の入浴や運動は避け、飲食には注意が必要など、創部の安静が不可欠
- 抜歯後のトラブルの予防として、強い含嗽(うがい)や喫煙は、強い痛みを伴うドライソケットの原因になるため避けるべき
- 抜歯後の腫れや痛みは24〜48時間でピークを迎えるため、処方された薬剤を正しく服用してコントロールすること
親知らずの抜歯は、術後のセルフケアが治癒の早さを左右します。特に抜歯直後は、傷口を塞ぐ「血餅」を流してしまわないよう、優しいうがいと清潔な口腔環境の維持を心がけましょう。
もし、数日経っても痛みが強くなる場合や出血が止まらないといった不安があるときは、遠慮せずに歯科医院を受診してください。
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