乳歯が虫歯になる原因
乳歯の虫歯の原因はひとつではありません。
数多くありますが、これらが組み合わさることで虫歯が起こると考えられています。
虫歯の原因菌
虫歯は、ストレプトコッカス・ミュータンスに代表される乳酸菌が作り出した乳酸が歯を溶かすことで起こる病気です。
お口の中には無数の細菌がいますが、虫歯の原因菌である乳酸菌の割合が高いと虫歯になりやすい傾向が見られます。
細菌の量が多いことも虫歯の原因のひとつです。
糖分
お口の中に糖分がないと、乳酸菌は虫歯の原因となる乳酸を作り出すことはできません。
糖分=甘いものをたくさん食べる機会の多いお子さんほど、虫歯になりやすくなります。
食べ方
一日の間、ずっとダラダラと食べるというような食習慣は虫歯を起こしやすいです。
何かを食べると、細菌の作り出す乳酸の働きにより、お口のpHが下がります。唾液の作用で下がったpHは戻るのですが、時間がかかります。pHが5.5以下になると、歯のエナメル質が溶け始め、虫歯リスクが高くと言われています。
pHが戻る前にまた食べると、上がりかけたpHが下がってしまい、お口の中のpHが低い時間が長くなります。よって、「pHが低い状態」=「虫歯リスクが高い状態」が続くことになります。
歯の質
乳歯は永久歯と比べて乳酸に対する耐性が低く、溶かされやすい傾向があります。
歯が乳酸に強いかどうかも、虫歯になりやすいかどうかに関係しています。
歯磨き
虫歯の原因となる細菌やそれらの栄養源となる食べかすなどをきれいに取り除くことは、虫歯予防にとても大切です。
言い方を変えると、不適切な歯磨きの方法や習慣も、虫歯の原因になります。
口呼吸
唾液には虫歯の原因菌の活動を抑える抗菌作用、食べかすなどを洗い流す洗浄作用、溶かされた歯を治す再石灰化作用、pHを戻す緩衝作用など、虫歯を防ぐ多くの働きがあります。
口で呼吸をする習慣があると、お口の唾液が蒸発してしまうので、唾液の虫歯予防の作用が発揮されなくなります。
口で呼吸する習慣も、虫歯の原因のひとつです。
歯並び
歯と歯が重なり合うような歯並びや歯の位置にずれのある歯並びでは、歯磨きが難しくなるので虫歯が生じやすいです。
歯並びの悪さも、虫歯の原因に挙げられています。
乳歯の虫歯ができやすい場所
- 1〜2歳ごろ:上顎の前歯
- 2〜3歳ごろ:上顎と下顎の奥歯
- 4〜5歳ごろ:各歯の隣接面(歯間部)
- 6〜9歳ごろ:第一大臼歯付近
- 9〜12歳ごろ:第二大臼歯付近
乳歯の虫歯の特徴と親御さんが知っておいて欲しいこと
乳歯の虫歯には永久歯の虫歯にはない特徴があります。
また、お子さんの歯科治療に際して、様々なことを行うことがあります。ご了承をいただけないと、安全上の問題から十分な治療ができなくなる可能性があります。
たくさんできやすい
乳歯の虫歯は、同時にたくさんできやすい傾向が見られます。これをランパウンドカリエスと呼んでいます。
数本同時に虫歯になることも珍しくないのですが、永久歯にはあまり認められない乳歯の虫歯の特徴です。
進行しやすい上に見つけにくい
乳歯のエナメル質は永久歯より薄い上、永久歯よりも乳酸に弱く溶かされやすいため、乳歯の虫歯は永久歯よりも進行が早いという特徴を持っています。
見えないところで広がりやすい
乳歯のエナメル質は永久歯より薄い上、永久歯よりも乳酸に弱く、溶かされやすく進行が早い傾向が見られます。
また、歯と歯の間など、乳歯の虫歯は見えにくいところで発生しやすいです。
進行が早いことと合わせて、保護者の方が気づいたらとても大きな虫歯になっていたということも多いです。
痛みが少ない
乳歯の虫歯には、痛みを感じにくいことが多いという特徴もあります
永久歯なら痛みが出そうな大きさの虫歯でも、乳歯は痛みがないことも珍しくなく、気づいたときには大きな虫歯になっていたということもしばしば見られます。
初期は白い
虫歯というと茶褐色や黒色のイメージがあると思いますが、乳歯の虫歯は、特に初期の段階ではそのような色にはならず、透明度のない白色をしていることがほとんどです。
予約時間はできるだけ午前中に
小さなお子さんは、午前中の方が機嫌が良いことが多いです。また、歯科治療を受けると疲れますから、午前中の診察をおすすめしています。
着替えもご持参ください
お子さんは、歯科治療で緊張して汗をかくこともあります。お着替えやタオル類をお持ちいただくことをお勧めしております。
診察前の食事は控える
小さなお子さんはストレスに弱く、歯科治療中のストレスから嘔吐する可能性もあります。
歯科治療中に嘔吐すると危ないので、診察予約の2時間くらい前から食べるのはできるだけ控えていただくのが無難です。
押さえることもあります
歯科治療中、急に体だけでなく手足だけでも動くと、とても危ないです。
歯科治療でケガをしないために、保護者の方にお子さんと一緒に診療台にのっていただいたり、スタッフがお子さんを押さえたりすることがあります。
開口器を使うこともあります
歯科治療の途中でお口を閉じてしまうのも、思わぬケガの原因になるのでとても危ないです。
治療の間、お口を開けていられないお子さんには、開口器というゴム上のブロックをお口に入れて、お口が不意に閉じないようにすることもあります。
乳歯の虫歯の進行と症状・痛み
乳歯の虫歯も永久歯と同様に虫歯の穴の深さから、COからC4までの5段階に分類されています。
CO:初期虫歯
COは、Caries(カリエス)・Obseavation(オブザベーション)の頭文字をとった表記です。
COの段階では、虫歯の穴はなく、痛みもありません。表面に白い濃い斑点模様が生じるだけです。
C1:エナメル質の虫歯
C1は、歯冠の外側を覆うエナメル質にだけ虫歯ができた状態です。
エナメル質に小さな虫歯の穴ができますが、痛みはないので場所によっては気づかないことも多いです。
C2:象牙質まで進んだ虫歯
C2は虫歯の穴がエナメル質を突破し、その下の象牙質にまで届いた状態です。
C2でも乳歯の場合は、食べ物が詰まることはあっても、痛むことはほとんどありません。
C3:神経まで進んだ虫歯
C3は、歯髄いわゆる歯の神経にまで虫歯が進んだ状態です。
C3に至れば、冷たいものや熱いものに痛みを感じるようになります。
C4:歯根だけ残った虫歯
C4は歯冠がなくなり、歯根を残すだけになった状態です。
C4になると歯髄が感じなくなるので痛みはなくなりますが、歯肉の腫れなど別の症状が現れます。
当院の小児の虫歯治療
当院では、お子さんの歯科治療にあたり、次のような方針で治療に当たっています。
まずは慣れてもらう
初めて歯科医院を受診なさったときの気持ちを覚えていますか?
どんなところだろうと、不安に思ったことありませんか?
お子さんも同じです。歯科医院という新しい環境に、とてもドキドキしているはずです。
当院では、治療に進む前に歯科医院に慣れてもらうことから取り組んでいます。
怖くないようにする
歯科治療というと、大人の方でも怖いというイメージを抱いている方がいらっしゃいます。お子さんならなおさらです。
一度怖くなってしまうと、次からの診療も難しくなります。そこでお子さんの歯科治療にあたり、できるだけ怖くないように工夫して、歯科医院に通いたくないというようなネガティブな気持ちにならないように努めています。
約束を大切にする
例えば、「今日は見るだけね」といって、頑張ってお口を開けてくれたお子さんに注射をすると、お子さんからの信用が失われ、何を言っても歯科医院を信じてくれなくなります。
そこで、当院では診療を進める上で、お子さんと約束した場合、その約束をできる限り守って診療するようにしています。
歯だけを診ない
当院の歯科治療は、“歯”だけをみているわけではありません。
お子さんが健やかに成長できるよう、歯だけでなくお口の癖や食べ方なども含めて、歯やお口の健康を守るようにしています。
予防を重視
お子さんの歯を守るには、小さな頃からの予防がとても大切です。
歯磨きの方法、歯磨き習慣、フッ素などを通して、お子さんの歯が虫歯にならないよう小さいうちから積極的に予防に取り組んでいます。
小児の虫歯治療
乳歯の虫歯の治療法は、虫歯の各段階によって変わってきます。また、乳歯は永久歯に生え変わる歯ということもあり、基本的には保険診療で対応します。
COの場合
COの場合は、削って詰めるような一般的にイメージされる虫歯治療は行われません。
自然治癒が見込める段階なので、フッ素塗布や歯磨き方法の練習、シーラントなどを行います。
C1の場合
C1では、保険診療内にて、削って詰めるコンポジットレジン充填治療が行われます。
乳歯のコンポジットレジン充填の方法は大人と同じですが、大人に使うコンポジットレジンより色が白いタイプを選ぶことが多いです。
C2の場合
C2の治療も、C1と同様に虫歯の部分を削って詰める治療が行われます。
コンポジットレジン充填:保険治療
乳歯の根管は比較的大きいので、C2のコンポジットレジン充填では直接コンポジットレジンを詰めるのではなく、歯髄を守るために削った穴の底にセメントを入れることもあります。
インレー:保険治療
奥歯の噛み合わせ面や隣接面にできた虫歯には、インレーを選ぶこともあります。
乳歯のインレーは、銀合金で作られます。
C3の場合
C3に至ると、歯内療法も行われます。歯内療法が終われば乳歯冠を装着します。
抜髄:保険治療
歯髄が生きている場合は局所麻酔ののち、歯髄を取り除く抜髄処置を行います。
抜髄後は根管内部の洗浄を行い、根管充填します。
感染根管治療:保険治療
歯髄が壊死した歯や一度歯内療法が行われた歯の場合は、感染根管治療が行われます。
根管内をきれいに洗浄し、無菌化したのち、根管充填に進みます。
生活歯髄切断法:保険治療
生活歯髄切断法は、歯髄の炎症や細菌感染が歯冠部の歯髄だけにとどまっている場合に選ばれます。
生活歯髄切断法で対応できるケースは、かなり限定的です。
乳歯冠:保険治療
歯内療法ののち、乳歯冠を装着します。
既製品を使うので、その日のうちに装着できるのが利点ですが、歯型をとって作る被せ物と比べると合い具合はよくないです。
C4の場合
C4にまで進むと歯はほとんど残っていないので、被せたり詰めたりする歯を残す治療はできません。
抜歯:保険治療
C4の治療は、基本的に抜歯です。
ですが、次に生えてくる永久歯のスペースを確保するために、残された歯根部分をコンポジットレジンなどで補強し、残すこともあります。
よくある質問
年齢制限はありません。
削って詰めるのが難しいような状態では、フッ化ジアンミン銀を虫歯に塗るなど、削らない治療を選びますので、虫歯に気づいたら年齢に関係なくご来院ください。
乳歯はいずれ永久歯に生え変わるからと、虫歯を放置するのは危険です。
乳歯の虫歯が大きくなると、永久歯の歯並びに影響するだけでなく、次に生えてくる永久歯の成長にも影響することがあるからです。
乳歯も虫歯になったら、早めに治療を受けるようにしてください。
乳歯の虫歯治療は早い段階で見つけることができれば、コンポジットレジンというプラスチックで治療できます。
コンポジットレジンで治療できれば金属を使うことはないので、金属アレルギーの心配はありません。
定期的に歯科医院で歯を診てもらい、虫歯の早期発見、早期治療により、金属を使わないで歯を治してもらいましょう。
虫歯かどうかの判断も、歯科医師の仕事のひとつです。診てみて虫歯がなければ、フッ素を塗るなど虫歯の予防処置を行います。
虫歯かもと不安に思ったら、遠慮せず歯科医院で診てもらってください。
虫歯予防には、フッ素が効果的です。
フッ素の利用法は、“フッ素入りの歯磨き粉で歯を磨く” “フッ素入りの洗口液でうがいをする”、そして、“歯科医院でフッ素を塗ってもらう”の3つです。
どれか一つだけ実践するのではなく、これら3つを組み合わせるのが虫歯予防に効果的です。
もちろん、フッ素を塗っていても、歯磨きをしっかり行わなければ虫歯になりますので、歯磨きも忘れないようにしてください。
子どもの虫歯治療の治療概要
治療方法 | |
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治療の説明 | 小児の虫歯は痛みが出にくく見つけにくい上、進行が早いのが特徴です。 |
治療の副作用(リスク) |
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術後の制限事項 |
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