親知らずとは
親知らずは、正式には第3大臼歯とよばれる最後に生えてくる最も奥の歯です。
親知らずは、顎の成長が終わってから生えてくる歯なので、生える時点で顎の骨の大きさに余裕がなければ、横向きや上下逆さま、埋まったままになるなど、真っ直ぐ生えることができません。また、退化傾向にある歯でもあり、大きさや歯根の形の差が大きいという特徴も持っています。
親知らずを抜歯する理由と放置のリスク
親知らずは何かあった場合、他の歯と異なり抜歯になることが多いです。その理由は、“奥すぎたり、生え方が悪かったりして歯磨きがしにくい” “噛み合っていないことが多い” “向きや位置から虫歯治療が難しい” “矯正治療の邪魔になる”などです。
もし、抜歯せずにそのまま放置していると、“虫歯や炎症が進行する” “手前の歯に虫歯や歯周病が広がる” “親知らずの炎症が悪化して顔が腫れる”などの原因になります。
親知らずの生え方(症状)
親知らずは真っ直ぐ生えていることは稀で、多くの場合は生え方自体に異常が認められます。
半埋伏
半埋伏は歯肉や骨の中に半ば埋もれ、歯冠の一部だけが露出した状態にある生え方です。
完全埋伏
完全埋伏は歯の全てが歯肉の下にあり、一部たりとも露出していない生え方です。
水平埋伏
水平埋伏は横向きに倒れ、水平になっている生え方です。歯冠の一部が露出していることもあれば、完全に歯肉に覆われていることもあります。
骨性埋伏
骨性埋伏は、歯冠の3分の2以上が骨に覆われている生え方です。
逆性埋伏
逆性埋伏は、歯冠と歯根が逆さまに埋まっている生え方です。
遠心傾斜
遠心傾斜は、後方に傾いた生え方です。
下歯槽管下埋伏
下歯槽管下埋伏は下歯槽管、もしくは下顎管という下顎骨の奥を通っているトンネル状の空洞より下方に埋まっている状態です。
親知らずを抜歯したほうが良いケース
“親知らずが虫歯になっている” “親知らずの歯冠の周囲にレントゲンで影がみられる” “親知らずの向きが悪い” “何度も腫れたことがある”といった場合は、抜歯した方がいいでしょう。
この他、親知らずの手前の奥歯の虫歯治療を進めるにあたって、親知らずが邪魔になるという場合も同様です。
親知らずを抜歯しなくても良いケース
真っ直ぐ生えていて、きちんと噛み合っている親知らずや完全に骨の中に埋まっていて炎症を起こしたことがない親知らずは、抜歯しなくてもよい可能性が高いです。
親知らずの抜歯時期
親知らずの抜歯は、炎症症状がないときを選びます。
腫れたり、痛くなったりしているときは、麻酔の効きが低下するので、おすすめできません。
親知らずの抜歯の治療時間
親知らずの抜歯にかかる時間は、麻酔の時間を含めおおむね30分です。
当院の親知らずの抜歯が選ばれる理由
当院の親知らずの抜歯では、事前の治療説明を徹底して、患者様のご不安や疑問を解消してから治療を行なっていいます。
口腔外科医が担当
当院では、親知らずの抜歯は口腔外科のキャリアを積んだ口腔外科医が担当しています。これまで多数の難しい親知らずの抜歯を経験してきた、大学病院や総合病院クラスの技術を持った歯科医師です。
他の歯科医院では、親知らずの抜歯は難しいと言われた方も、当院にぜひご相談ください。
ストレスに配慮した処置
当院では親知らずの抜歯に際し、抜歯時の痛みや不安、恐怖心を可能な限り減らすように努めています。
注射の痛みを緩和するため、表面麻酔をしてから局所麻酔の注射をしますし、抜歯中に痛みがあれば、麻酔薬を追加しています。また、ご希望があれば、静脈内鎮静法という恐怖心をなくす麻酔法を追加することもできます。
充実した術前検査
親知らずを的確に抜歯するには、抜歯前の検査が重要です。
パノラマエックス線写真というお口全体を写すレントゲン写真だけでは、親知らずの歯根の向きや形、数などが十分確認できません。また、下顎の場合は親知らずの周囲の神経、上顎の場合は親知らずの上にある上顎洞という骨との位置関係も正確に把握するのは困難です。
そこで当院ではCTを撮影して、親知らずやその周囲組織の状態を確認してから抜歯にあたっています。より詳しく状況を確認することで、的確で合併症を起こしにくい親知らずの抜歯を実現しています。
セカンドオピニオンにも対応
当院では、親知らずのセカンドオピニオンも受け付けています。
他の歯科医院での親知らずの治療方針を聞いて不安や質問のある方は、当院のセカンドオピニオンをお勧めしております。また、他の歯科医院で親知らずの抜歯ができないと言われた方、抜歯しようとしたけれどできなかったという方も当院にご相談ください。
親知らずの抜歯の流れ
親知らずの生え方は多彩です。生え方によって親知らずの抜歯の方法は変わるので、抜歯の流れを一言で表すのは困難です。
※ここでは親知らずの抜歯の基本ともいえる、下顎の水平埋伏状態にある親知らずの抜歯を例にご紹介しています。
- 1.
問診
親知らずについて何が気になっているのか、現在治療中もしくは過去に治療を受けた病気の有無、薬や食べ物に対するアレルギーの有無をお尋ねします。
問診の結果によっては、医科に病状を問い合わせることもあります。 - 2.
検査
親知らずの状態を検査します。基本となるのが画像検査です。
レントゲン写真で親知らずの向きや歯根の形と数、周囲組織との状態を調べます。必要に応じてCTを撮影し、親知らずとその周囲組織の状態を三次元的に確認します。もちろん、親知らずの視診や触診もします。
何らかの全身的な病気をお持ちの方の場合などは、血液検査を行うこともあります。 - 3.
診断
検査結果に基づき、親知らずの状態を診断し、抜歯の適否を判断します。
- 4.
説明と同意の獲得
抜歯方法を検討します。
抜歯の術式や、抜歯に伴う合併症などのリスクを説明し、同意を得たのち抜歯に進みます。 - 5.
局所麻酔
親知らずの周囲の歯肉に表面麻酔をかけます。その後、浸潤麻酔という注射による麻酔を行います。
親知らずの状況によっては、知覚神経の元の部分に麻酔をかけ、広範囲の知覚を麻痺させる伝達麻酔を行うこともあります。 - 6.
粘膜骨膜弁の形成
歯肉を切開して歯肉を骨膜から剥離し、親知らずの周囲の歯肉を粘膜骨膜弁とよばれる剥離状態にします。
切開線は、第二大臼歯という親知らずの前方の奥歯の後面から後方にかけての延長切開、第二大臼歯の側面から外側に向けての縦切開が設定されることが多いです。 - 7.
骨開削
親知らずの歯冠の幅の最も太い部分が露出するまで、歯冠の周囲の骨を削ります。
- 8.
歯冠の分割と摘出
抜歯する際には、歯の中心軸方向に歯を摘出します。
水平埋伏状態にある親知らずは、中心軸の方向に第二大臼歯があり、その方向に歯を摘出することはできません。そこで、まず歯冠と歯根の境界付近で親知らずを削り、親知らずを歯冠と歯根に分割します。そして、歯冠部分だけを先に摘出します。
歯冠部分の状態によっては一度で分割できないこともあり、その場合は複数回に分けて歯冠を分割します。 - 9.
歯根の分割と摘出
歯根が複数あり、しかも歯根の方向がそれぞれ離れるように開いている場合は、そのままでは歯根を摘出することはできません。また、歯根が一つであっても歯根の先端部分が曲がっていたり、膨れていたりする場合も同様です。このような場合は、歯根を削合して分割します。
歯根分割ののち、残っている歯根を摘出します。 - 10.
縫合
粘膜骨膜弁を元に戻し、歯肉を縫合します。
縫合糸は非吸収性の絹糸かナイロン糸で、吸収糸で縫合することはまずありません。 - 11.
抜糸
縫合した糸は、およそ1週間後に抜糸します。
よくある質問
親知らずの炎症が落ち着いて痛くなくなったとしても、再び繰り返し炎症が起こることが多いです。そのうえ、炎症を繰り返すと周囲の骨が硬くなり抜歯しにくくなるので、一度でも痛くなったことがあるなら、痛くなくても抜いたほうがよいです。
親知らずの抜歯は通常の抜歯よりも複雑であるうえ、さまざまな合併症のリスクがあります。そして、親知らずの状態も個人差が大きいです。
そこで初診時は親知らずの状態の説明や抜歯の術式をしっかり説明し、次回の受診時に十分な時間をとって抜歯するようにしています。
抜歯後の腫れは24〜48時間でピークを迎え、その後数日かけて引いてくることが多いです。痛みについては個人差が大きく、この限りではありません。
局所麻酔が効いている術後2〜3時間(伝達麻酔をした場合は5〜6時間)ほどは、食べられません。
麻酔がさめたのち、やわらかいものなど、抜歯したところを刺激しないようなものから食事を再開していただきます。
親知らずを抜いたところに当たらないように気をつけていただければ、歯磨きはしていただけます。
基本的には、同じ側の上下2本までです。通常、左右両方の親知らずを同時に抜歯することはありません。
まず、30分ほどしっかりガーゼを噛んでください。その間、ガーゼを外して止血状態を確認するようなことはしないでください。
それでもまだ出てくるようなら、もう30分噛んでください。この後も出血しているなら、主治医に連絡して相談してください。
なお、抜歯してから数日の間は唾液に血がにじむことが多いです。にじむ程度の出血なら気にしなくても大丈夫です。
親知らずの抜歯の治療概要
治療方法 | |
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治療の説明 | 前歯から数えて8番目にある永久歯の第三大臼歯を「親知らず」といい、何らかの理由から上下左右で合計4本の歯を対象とした抜歯の治療です。 |
治療費 | 保険診療内 ※生え方により費用が異なります。 |
治療期間 | 2分〜20分程度 ※困難な生え方の場合は時間がかかるため、事前にご説明いたします。 |
通院回数 | 1回 ※原則として1回の通院で1本の抜歯となります。 |
治療の副作用(リスク) | 神経損傷のリスク。麻酔が切れると痛み、腫れは出ますが、通常、薬を飲めば緩和します。 |